《樹骨》
- 制作年
- 1960年
- サイズ
- 116.8x91.4cm
- 素材
- 油彩、カンヴァス
作家について
(1913年-1960年)
池野清は長崎市出身の洋画家。独立展を発表の場とした(生涯「会友」の地位にとどまった)。単純化された風景や樹木、静物などを、厚塗りのマティエールと抑えた色調で描いた静謐な作品で知られる。また勤労者の美術愛好グループや児童に絵画を教え、草創期の長崎県展や市展で審査員を務めるなど、戦後長崎の美術振興に貢献したことも重要である。
長崎市立長崎商業学校卒業後、独学で画家を志した池野は、1935(昭和10)年に《ベランダから見た庭園》で西日本美術展受賞。1937年、《海辺の静物》で第7回独立展に初入選(以後、応召から戦後の数年間を除き歿年まで連続入選する)。1941年、独立美術協会会友に推挙される。1944年、応召。1945年、長崎市において、救援活動のために原爆投下直後の爆心地に入り被爆。1949年から胸部疾患のため療養。1959年、《鳩笛たち》(長崎県美術館)が春季独立展に招待出品される。1960年に46 歳で肝臓癌により他界。この年に描かれ遺作となった《木立》《樹骨》(ともに長崎県美術館)は、第28回独立展に入選した。
池野の死の翌年、友人で長崎市出身の作家・佐多稲子(1904-98)が、短編「色のない画」(『新日本文学』1961年3月号に掲載)において池野をモデルにした主人公を登場させ、さらに1972年には、その発展形ともいうべき長編『樹影』(講談社)を出版し、同じく池野をモデルとした主人公の生と死を、理不尽な暴力への静かな怒りと深い哀惜を込めて描写した(同書は野間文芸賞を受賞)。
【主要文献】
『池野清画集』池野清画集刊行会、1961年